必要条件と構成(JJMO2022h-3)
今回は、典型レベルの証明問題を解いてきます。あらゆる問題の基礎となる考え方が含まれているのでとても学びある問題だと思います。それでは、よろしくお願いします。
問題
6つの相異なる実数 \(a,b,c,x,y,z\) がある。次の6つの式 \[ ax+by+cz, \ ax+bz+cy, \ ay+bx+cz, \ ay+bz+cx, \ az+bx+cy, \ az+by+cx \] のうち、値が \(1\) に等しいものの個数としてありうる最大の値を求めよ。
この手の問題は手を動かさないと始まりません。問題で与えられたことを数式で表現するとどうなるか?を考えるようにしましょう。
解説
step1.明白なことを式で表現
上記の6つの式は対称なので \(ax+by+cz=1\) としても一般性を失わない。
ここで、\(ax+bz+cy=1\) と仮定する。すると、\(by+cz=bz+cy\) が成り立ち、\((b-c)(y-z)=0\) が成り立つ。 しかし、\(a,b,c,x,y,z\) は全て相異なるのでこれは矛盾する。 従って、\(ax+bz+cy\) は \(1\) ではない。 同様に、\(az+by+cx,ay+bx+cz\) も \(1\) とならない。 よって、\(1\) としてありうる最大数は \(3\) 以下である。
(解答が \(1\) 以上であることは明白なので、とりあえず適当な一つを \(=1\)と置いている。その式をこねくり回してみると、簡単に解答が \(3\) 以下であることが絞り込めた。)
step2.反証したい事柄を式で表現
ここで、解答が \(3\) であると仮定する。この場合、以下の三つの式を満たすような相異なる実数 \(a,b,c,x,y,z\) が存在することになる。
\[ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} ax+by+cz=1 \ \cdots(1) \\ ay+bz+cx=1 \ \cdots(2) \\ az+bx+cy=1 \ \cdots(3) \end{array} \right. \end{eqnarray} \]
(実験をして解答が \(3\) となるのはどうも難しそうだと予想を立てます。その予想に向かって、背理法を用いています。)
\((1)-(2),(2)-(3),(3)-(1)\) を考える。
\[ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a(x-y)+b(y-z)+c(z-x)=0 \ \cdots(4) \\ b(x-y)+c(y-z)+a(z-x)=0 \ \cdots(5) \\ c(x-y)+a(y-z)+b(z-x)=0 \ \cdots(6) \\ \end{array} \right. \end{eqnarray} \]
さらに、\((4)-(5)\) を考える。
\[ (a-b)(x-y)+(b-c)(y-z)+(c-a)(z-x)=0 \ \cdots(7) \]
一般性を失わず、\(a < b < c , x < y < z \) とする。ここで、 \[(a-b)(x-y)>0, \ (b-c)(y-z)>0, \ (c-a)(z-x)>0\] であるが、これは \((7)\) に矛盾する。よって、解答は \(2\) 以下である。
(最初の \((1),(2),(3)\) の形では何も得られなさそうなので足したり引いたり、式変形をしています。その後、対称性を利用して大小関係を設定して矛盾を導きます。)
step3.構成
\((a,b,c,x,y,z)=(0,1-\sqrt{2},3-\sqrt{2},1,3,\sqrt{2})\) などとすれば、実際に\(ax+by+cz=1\) と \(ay+bz+cx=1\) が成り立つことから、解答は \(2\) となる。
(必要条件で最大値が \(2\) 以下であると絞り、構成するという流れです。少し工夫して連立方程式を解けば良いです。)
まとめ
・日本語を数式で表現することは全ての基本です。明白な事柄を数式で表現しただけで結構たくさんの情報が絞れました。
・必要性で絞って十分性(構成する)で攻めるという流れは競技数学では頻出です。押さえておきましょう。
・実験は大切です。今回の解説ではスムーズに解答を予想しているように見えましたが、これは実際には実験を重ねて予想するものです。実験はいつでも欠かせません。