計算の工夫と命題の言い換え
今回は、言い換えが気持ちいい問題を解いていきたいと思います。それでは、よろしくお願いします。
問題
正整数 \(n,m\) に対して、\(f_n(m)\) を以下で定義する。
・\(f_n(m)\) を、 \(m\) を \(1\) 以上 \(n\) 以下の相異なる正整数の和で表す方法全てについて、その(和が \(m\) になる)数の積の逆数の和と定義する。 ただし、\(m\) を \(1\) 以上 \(n\) 以下の相異なる正整数の和で表すことができない場合は、\(0\) と定義する。
具体例
\(6 = 1+5 = 2+4 = 1+2+3\) であるため、\(f_8(6) =\frac{1}{6} + \frac{1}{1\cdot 5} + \frac{1}{2\cdot 4} + \frac{1}{1 \cdot 2 \cdot 3} = \frac{79}{120}\) である。\(5 = 2+3\) であるため、\(f_3(5) = \frac{1}{2\cdot 3} = \frac{1}{6}\) である。
このとき、以下の等式を示せ。 \[f_{n}\left(1\right)+f_{n}\left(2\right)+\cdots+f_{n}\left(1 + 2 + \cdots + n\right) = n\]
この \(f\) とは、さらにその和が何を意味するのかを考えましょう。
解説
解法1(命題の変換による解法)
\[\sum_{m=1}^{\frac{n\left(n+1\right)}{2}}f_{n}\left(m\right)= \sum_{m=1}^{\infty}f_{n}\left(m\right)\] である。これは \(\{1,2,3,\cdots,n\}\) の一つ以上の要素の選び方 \(2^{n}-1\) 通り全てについて、その積の逆数を足し合わせた値に等しい。 さらに、これは \(\{1,\frac{1}{2},\frac{1}{3}, \cdots, \frac{1}{n}\}\) の一つ以上の要素の選び方 \(2^{n}-1\) 通り全てについて、その積を足し合わせた値に等しい。 これは、 \[\left(1+\frac{1}{1}\right)\left(1+\frac{1}{2}\right)\left(1+\frac{1}{3}\right)\cdots \left(1+\frac{1}{n}\right) - 1 = \frac{2}{1} \cdot \frac{3}{2} \cdot \frac{4}{3} \cdots \cdot \frac{n+1}{n} - 1 = n\] と計算できる。よって、題意は示された。
解法2(多項式による解法)
多項式 \(P(x)\) を以下で定める。 \[P(x) = \prod_{i=1}^{n}\left(x^{i}+i\right)=\sum_{j=0}^{\frac{n\left(n+1\right)}{2}}g_{n}\left(j\right) \cdot x^{j}\] このとき、\(f_n(x) = \frac{g_n(x)}{n!}\) である。\(P(1) = (n+1)!\) であるから、 \[\sum_{m=0}^{\frac{n\left(n+1\right)}{2}}\frac{g_{n}\left(m\right)}{n!}=1+\sum_{m=1}^{\frac{n\left(n+1\right)}{2}}f_{n}\left(m\right)=\frac{\left(n+1\right)!}{n!}\] を得る。このことから、 \[\sum_{m=1}^{\frac{n\left(n+1\right)}{2}}f_{n}\left(m\right) = n\] と計算できる。よって、題意は示された。